この記事は電子帳簿保存法の「基礎知識編」です。
具体的な対応手順を知りたい方は【実践編】をご覧ください。
→ 電子帳簿保存法の対応手順5ステップ【実践編】
「電子帳簿保存法という言葉は聞いたことがあるけれど、自分の会社には何が関係するのかよくわからない」という経営者の方は多いです。この記事では、電子帳簿保存法の基本的な内容と、中小企業が実際にやるべき対応を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
電子帳簿保存法とは?
【編集部より】この法律の相談で最も多いのは、「うちは紙中心の商売だから関係ない」という誤解です。実際には、紙のやり取りが中心の会社でも、Amazonでの備品購入やクラウドサービスの利用明細など、気づかないうちに電子データでのやり取りが発生しています。「紙か電子か」を業種で判断するのではなく、実際に届いている書類を1つずつ確認する必要がある、という点が見落とされがちです。
電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、会社の帳簿や領収書などの書類を、紙ではなくデータで保存することを認める法律です。1998年に制定されましたが、2022年・2024年の改正で中小企業にも大きく関わる内容に変わりました。
一言でまとめると、「電子でやり取りした書類は、電子のまま保存しなければならない」というルールが義務化されました。これまで「とりあえず紙に印刷して保管」していた会社は、対応が必要になります。
3つのルールを整理する
【編集部より】3つのルールのうち①②は任意、③のみ義務という構成になっていますが、経営者からの相談ではこの違いが曖昧なまま進んでしまうケースをよく見ます。「電子帳簿保存法に対応する」と一括りに考えると、任意の①②まで無理に対応しようとして負担が増えたり、逆に義務である③への対応が後回しになったりします。まずは③の電子取引データ保存だけを確実に押さえ、①②は余力があれば検討する、という優先順位で進めるのが現実的です。
電子帳簿保存法は大きく3つのルールに分かれています。それぞれ対象が異なるので、自社に関係するものを確認しましょう。
①電子帳簿等保存(任意)
会計ソフトで作成した総勘定元帳や仕訳帳などを、データのまま保存してよいというルールです。これは義務ではなく任意です。クラウド会計ソフトを使っている場合は、自然と対応できていることがほとんどです。
②スキャナ保存(任意)
紙で受け取った領収書や請求書を、スキャンやスマートフォン撮影でデータ化して保存できるルールです。これも任意ですが、活用すると紙の管理が大幅に減ります。
③電子取引データ保存(義務)
最も重要なルールです。メールやクラウドサービス経由で受け取った請求書・領収書などは、印刷して紙で保存することが認められなくなりました。受け取った電子データは、そのままデータで保存することが義務です。2024年1月から完全義務化されています。
多くの中小企業が見落としがちなポイント:「うちはほとんど紙のやり取りだから関係ない」と思っていても、メールで送られてくるPDFの請求書や、AmazonなどECサイトの購入明細も対象です。
義務化で何が変わったか
| 2023年12月まで | 2024年1月以降 | |
|---|---|---|
| 電子で受け取った書類 | 印刷して紙保存でもOK | 電子データで保存が義務 |
| 保存時の検索要件 | 猶予期間あり | 要件を満たす保存が必要 |
| 罰則 | 緩やか | 悪意ある違反には重加算税の可能性 |
※法令の詳細・最新情報は国税庁の公式サイトまたは顧問税理士にご確認ください。
【編集部より】この表で特に意識してほしいのは「保存時の検索要件」です。単に電子データとして保存すればよいわけではなく、取引年月日・取引先・金額で検索できる状態にしておく必要があります。「フォルダに保存してはいるが、ファイル名がバラバラで後から探せない」という状態は、法律上の要件を満たしていない可能性があるため注意が必要です。
中小企業がやるべき対応 4ステップ
Step 1:電子で受け取っている書類を洗い出す
メールで届くPDF請求書、ECサイトの購入明細、クラウドサービスからの利用明細など、電子で受け取っているすべての書類をリストアップします。これが対応の出発点です。
Step 2:保存場所とファイル名のルールを決める
「フォルダのどこに」「どんなファイル名で」保存するかを社内で統一します。国税庁が求める検索要件(取引年月日・取引先・金額で検索できること)を満たす必要があります。
Step 3:クラウド会計ソフトや専用ツールを活用する
freeeやマネーフォワードなどの主要クラウド会計ソフトは、電子帳簿保存法への対応機能をすでに搭載しています。ソフト内で受け取った書類を保存・管理できるため、別途システムを用意しなくて済む場合があります。
Step 4:社内のルールを文書化して周知する
担当者だけが対応を把握していると、担当者が変わったときに対応漏れが起きます。「電子書類はこう保存する」というルールをA4一枚でまとめ、関係者全員に共有しておきましょう。
【編集部より】4ステップの中で、実務上最も見落とされやすいのはStep 1の「電子で受け取っている書類を洗い出す」段階です。多くの会社が「うちはメールでの請求書くらいだろう」と考えて洗い出しを簡単に済ませてしまいますが、実際にはSaaSツールの利用明細、ECサイトでの備品購入、クラウドストレージ経由でのファイル受領など、想像以上に電子取引が広範囲に及んでいることがほとんどです。洗い出しは経理担当者一人ではなく、各部署に「電子で受け取っている書類はないか」と確認する形で進めると漏れが減ります。
こんな状況、心当たりはありませんか?
【紙印刷の習慣】
「メールで届いた請求書はとりあえず印刷して、ファイルに綴じている」
2024年1月以降、この方法だけでは法律上の要件を満たせません。印刷は参考用にとどめ、電子データを正式な保存場所に保管する運用への切り替えが必要です。
【EC・サブスク利用】
「AmazonビジネスやAdobe、各種SaaSの利用明細は、必要なときだけサイトにログインして確認している」
これらのオンライン明細も電子取引データ保存の対象です。毎月ダウンロードして所定のフォルダに保存する習慣をつける必要があります。
【担当者任せ】
「経理の対応は担当者に丸投げしていて、何をどう保存しているか把握していない」
法令対応の責任は会社にあります。担当者に確認し、保存ルールが文書化されているかどうかをチェックすることが経営者の役割です。
【編集部より】ここまでの内容を踏まえると、電子帳簿保存法への対応で最も避けたいのは、「経理担当者に丸投げした結果、対応状況を誰も把握していない」という状態です。法令対応の責任は会社にありますが、実際の作業は担当者一人に集中しがちです。経営者や総務責任者が「保存ルールが文書化されているか」を年に一度でも確認する仕組みを作っておくと、担当者の異動や退職があっても対応が途切れずに済みます。
まとめ
- 電子帳簿保存法は「電子で受け取った書類は電子で保存する」ことを義務化した法律
- 2024年1月から完全義務化。メールのPDF請求書やEC明細も対象
- まず「電子で受け取っている書類」を洗い出し、保存ルールを決めることが第一歩
- クラウド会計ソフトを使っている場合は、対応機能が内蔵されていることが多い
- 詳細な要件は顧問税理士や国税庁のガイドラインを必ず確認する
電子帳簿保存法の対応に使えるクラウド会計ソフトを探している方は、比較記事もあわせてご覧ください。
※本記事の内容は執筆時点の情報をもとにしています。法令は改正される可能性があるため、最新情報は国税庁の公式サイトまたは顧問税理士にご確認ください。

