「ハンコのために出社が必要」「FAXでしか注文を受け付けてもらえない」という状況はまだ多くの中小企業で続いています。脱ハンコ・脱FAXを進めるための具体的な手順と、取引先への対応方法を解説します。
編集部では、実際に脱ハンコ・脱FAXを進めた中小企業の事例をもとに、「どこから手をつければいいか」という視点でこの記事をまとめました。
ハンコ・FAXをやめることで何が変わるか
ハンコ文化の問題点
- 承認のためだけに出社が必要になる
- 書類が手元に届くまで業務が止まる
- 郵送・保管のコストと手間がかかる
- 押印した書類の管理・検索が大変
FAXの問題点
- 受信したFAXを手入力でシステムに転記する必要がある
- 紙が増え、保管スペースが必要
- 送受信の記録管理が煩雑
- テレワーク時に対応できない
いずれも「紙と物理的な場所」への依存が根本の問題です。
【編集部より】「ハンコのために週に1回出社している」という担当者の声は、テレワーク導入後の会社でよく聞かれます。脱ハンコを進めると、この「承認待ち」による業務の停滞がなくなり、意思決定のスピードが大幅に上がります。コスト面でも、郵送費・印紙代・書類保管スペースのコストが削減できます。
脱ハンコの進め方
ステップ1:社内の押印フローを整理する
まず「どの書類に、誰が、どのタイミングで押印しているか」を一覧化します。すべての押印が本当に必要かを見直すことで、意外と不要なものが見つかります。
【編集部より】押印フローを整理した会社では、「慣習で続けていただけで実は不要だった押印」が複数見つかるケースが多いです。まずツールを導入する前に「そもそもこの押印は必要か」を見直すだけで、業務を簡略化できることがあります。一覧表はExcelで十分です。書類名・押印者・頻度・目的を4列で整理するところから始めてみてください。
ステップ2:電子署名・電子契約サービスを導入する
取引先との契約書・発注書・請書など、相手がいる書類には電子契約サービスを使います。
主なサービス:
- クラウドサイン:国内最大手・多くの企業が対応済み
- GMOサイン:料金が抑えられ中小企業にも使いやすい
- DocuSign:グローバル展開している企業に向いている
なかでも、0円から始められるベクターサインは、電子契約を初めて導入する中小企業に試しやすいサービスです。
各サービスの料金・機能の詳しい比較はこちらをご覧ください。
電子契約サービスを使うと、書類をPDFで送付し、相手がブラウザ上でサインするだけで契約が完結します。郵送・保管が不要になります。
【編集部より】電子契約サービスを導入した会社からよく聞かれるのが「取引先が思ったよりスムーズに対応してくれた」という声です。相手側もアカウント登録不要でブラウザ上からサインできるため、手間がほとんどかかりません。まず社内の新規契約から試してみると、導入のハードルが低くなります。
ステップ3:社内の決裁をワークフローシステムに移す
稟議書・経費精算・休暇申請など、社内のハンコが必要な書類は、ワークフローシステムで電子化できます。
使いやすいサービス:
- ジョブカンワークフロー
- コラボフロー
- マネーフォワード クラウド経費(経費精算に特化)
スマホから申請・承認できるため、外出中や出張中でも業務が止まりません。
【編集部より】社内決裁のワークフロー化で特に効果が大きいのが「経費精算」です。紙の領収書を集めて月末にまとめて申請するフローが、スマホ撮影・その場で申請・上長がスマホで承認というフローに変わると、担当者・承認者双方の負担が大きく減ります。まず経費精算だけでも電子化するところから始めることをおすすめします。
脱FAXの進め方
ステップ1:FAXをインターネットFAXに切り替える
物理的なFAX機を使い続けながら、受信をデジタル化する最初のステップです。インターネットFAX(eFax、メッセージPlusなど)を使うと、FAXの内容がPDFでメールに届きます。FAX機を持ち歩かなくてもどこでも確認できます。
【編集部より】FAX機をすぐに廃止するのが難しい会社でも、インターネットFAXへの切り替えは比較的簡単に進められます。FAXの内容がメールで届くようになるだけで、テレワーク中の「FAX確認のための出社」がなくなります。月額数百円から使えるサービスもあるため、まずここから始めるのがおすすめです。
ステップ2:取引先に電子的な発注・受注を提案する
FAXでやり取りしている取引先に、メール・Web発注フォームへの切り替えを提案します。最初は抵抗を示す取引先もいますが、「メールでも同じ内容を送れる」と伝えることで対応してもらえることが多いです。
【編集部より】「取引先がFAXにこだわっているから脱FAXは難しい」と思っている会社でも、実際に「メールでもOKですか?」と聞いてみると、あっさり対応してもらえるケースが多いです。相手側も内心「FAXは面倒」と思っていることがあります。まず主要取引先5社に打診してみることをおすすめします。
ステップ3:受発注システムを導入する
取引先が複数あり、FAXでの受発注量が多い場合は、受発注管理システムの導入が有効です。発注側・受注側両方がWebブラウザから注文・確認・納品管理ができます。
【編集部より】受発注システムの導入は初期コストがかかりますが、FAXの転記作業によるミスや、注文内容の確認電話が大幅に減ります。取引先への説明資料として「双方の作業が減るメリット」を数字で示すと、導入への協力を得やすくなります。
取引先への対応
「うちの取引先がFAX・ハンコにこだわっている」という場合の対応です。
まず打診してみる
「電子メールでの対応も可能ですか?」と聞くだけで対応してもらえるケースが多くあります。相手も内心「FAXは面倒」と思っていることがあります。
最初はどちらでも対応できる体制にする
一気に切り替えるのではなく、「FAXでもメールでも対応できます」という形で移行期間を設けると、取引先の抵抗が少なくなります。
大口取引先には個別に説明する
重要な取引先には、電子化のメリット(お互いの手間が減る・書類の保管が楽になる)を説明した上で移行を提案します。
【編集部より】取引先への切り替え提案で最も効果的だったのは「御社にもメリットがある」という伝え方です。「FAXの転記ミスがなくなる」「注文履歴がデータで管理できる」など、相手側のメリットを具体的に伝えると、協力を得やすくなります。
まとめ
- 社内の押印フローを整理し、不要な押印を見直すことが最初のステップ
- 取引先との契約には電子契約サービス(クラウドサイン・GMOサインなど)を活用する
- 社内決裁はワークフローシステムに移行すると、どこからでも承認できる
- FAXはまずインターネットFAXで受信をデジタル化し、段階的に電子メールへ切り替える
- 取引先には「どちらでも対応できる」移行期間を設けると摩擦が少ない
- まず「社内の押印一覧を作ること」から始めると、どこから手をつければよいかが見えてきます。ツール導入より先に「本当に必要な押印かどうか」の見直しが、最も即効性のある一歩です。
請求書のペーパーレス化と電帳法対応については、こちらの記事でくわしく解説しています。

