この記事は電子帳簿保存法の「実践編」です。
法律の基本的な仕組みを知りたい方は【基礎知識編】をご覧ください。
→ 電子帳簿保存法とは?3つのルールと義務化の内容【基礎知識編】
「電子帳簿保存法って、うちの会社も対応しないといけないの?」
「むずかしそうで、何から手をつければいいかわからない…」
そう感じている中小企業の経営者・総務担当の方は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、すべての会社が対応しなければならない部分は「電子取引のデータ保存」だけです。 しかも、売上高5,000万円以下の小規模事業者は要件が一部緩和されており、思ったよりシンプルに対応できます。
この記事では、法律の難しい説明はできるだけ省いて、「今すぐ何をすればいいか」を5つのステップでわかりやすく解説します。
そもそも電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法(電帳法)とは、会社の帳簿や書類を電子データで保存するときのルールを定めた法律です。
以前は紙での保存が原則でしたが、この法律によって電子データでの保存が認められるようになりました。そして2024年1月からは、メールやウェブで受け取った請求書・領収書などの「電子取引データ」は電子のまま保存することが義務化されました。
見落としやすいのがFAXです。複合機のペーパーレス受信やインターネットFAXに切り替えると、受信したデータも電子取引にあたります。切り替えと保存義務の関係は脱ハンコ・脱FAXの進め方で扱っています。
電子帳簿保存法は3つの区分に分かれているが、義務として対応しなければならないのは電子取引のデータ保存だけである。帳簿の電子保存とスキャナ保存は任意で、紙のまま続けても違反にはならない。3区分すべてを同時に整えようとすると着手が遅れるので、まず電子取引の保存から手を付けるほうが順序として無理がない。
対応が必要な3つの区分
電子帳簿保存法は3つの区分に分かれています。
| 区分 | 内容 | 対応の必要性 |
|---|---|---|
| 電子取引のデータ保存 | メール・ウェブで受け取った請求書・領収書などの保存 | 全事業者に義務 |
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿・書類の電子保存 | 任意(紙でもOK) |
| スキャナ保存 | 紙の書類をスキャンして電子保存 | 任意 |
中小企業が今すぐ対応しなければならないのは「電子取引のデータ保存」だけです。
具体的には、以下のような書類が対象になります。
- メールで受け取った請求書・領収書・見積書
- ネットショッピングの購入明細(PDF・画面キャプチャ)
- クラウドサービスの利用明細
- EDI取引のデータ
小規模事業者は要件が緩和されている
売上高(基準期間)が5,000万円以下の事業者は、検索要件が免除されます。
通常は「取引年月日・取引金額・取引先」で検索できるように保存する必要がありますが、小規模事業者はこの要件が免除され、フォルダにファイルを保存するだけでOKになります(税務調査時にデータのダウンロードに応じられることが条件)。
つまり、売上5,000万円以下の会社であれば、特別なシステムを導入しなくても対応できる可能性が高いです。
検索要件には免除の余地がある。基準期間の売上高が5,000万円以下の場合、または出力書面を日付・取引先ごとに整理して提示・提出できる場合は、検索機能の要件そのものが不要になる(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問50)。いずれも税務調査の際に電磁的記録の提示・提出に応じられることが前提だが、該当するなら専用システムを入れずフォルダ保存とファイル名のルールで足りる。自社がどちらかに当たるかを先に確認しておくと、この先の作業量が変わる。
今すぐできる対応手順・5ステップ
ステップ1:電子取引の洗い出し
洗い出しで漏れやすいのはインターネットバンキングである。振込明細や入出金の履歴も電子取引データに当たり得るのに、請求書と領収書だけを見ていると抜ける。経理が日常的に開いているオンラインサービスを一つずつ挙げていくほうが確実だ。
まず、自社でどんな電子取引があるかをリストアップします。
確認するポイント
- メールで請求書・領収書を受け取っているか
- ネットで購入している備品・消耗品はあるか
- クラウドサービスの利用料はどこで確認できるか
- インターネットバンキングを使っているか
これらがすべて「電子取引」の対象になります。
ステップ2:保存ルールを決める
電子データの保存場所とファイル名のルールを決めます。
シンプルなルール例
保存場所:共有フォルダ or クラウドストレージ(GoogleドライブなどでOK)
フォルダ構成:年 → 月 → 取引先名
ファイル名:日付_取引先名_金額(例:20260401_〇〇株式会社_55000円)
売上5,000万円以下の事業者は、このようなシンプルな管理でも対応できます。
ステップ3:事務処理規程を作成する
事務処理規程を整える場合は、国税庁が公開しているひな形を自社の運用に合わせて直すのが早い。ゼロから条文を起こす必要はなく、保存場所やファイル名の決め方といった、前のステップで決めたルールを文書の形に移すだけである。
「データをどのように保存・管理するか」を社内ルールとして文書化します。
国税庁がひな形を公開しているので、それをベースに自社用に修正するだけでOKです。
国税庁の参考資料: 「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例)」で検索してダウンロードできます。
ステップ4:データの保存を開始する
ルールが決まったら、実際にデータの保存を始めます。
クラウド会計ソフトを使っている場合
マネーフォワードや弥生などのクラウド会計ソフトには、電子帳簿保存法に対応した機能が搭載されています。請求書・領収書をアップロードして保存できますが、要件を満たすかどうかは製品の対応状況と保存のしかたで確認してください。
クラウド会計ソフトを使っていない場合
GoogleドライブやDropboxなどのクラウドストレージに、ステップ2で決めたルールに従ってファイルを保存します。
ステップ5:定期的に運用を確認する
紙で受け取った請求書や領収書は、紙のまま保存を続けて差し支えない。保存義務がかかるのは最初から電子データで受け取ったものだけで、紙の書類を電子化するスキャナ保存はあくまで任意である。この線引きが、電子帳簿保存法で最初に押さえるところになる。
保存漏れがないか、月に一度チェックする習慣をつけましょう。
チェックリスト(月次)
- [ ] その月に受け取った電子取引データをすべて保存したか
- [ ] ファイル名のルールに従って保存できているか
- [ ] 削除・上書きしていないか
よくある疑問Q&A
Q:紙で受け取った請求書はどうすればいい?
A:紙で受け取った書類は、引き続き紙のまま保存でOKです。スキャナ保存は任意なので、無理にデジタル化しなくても問題ありません。
受け取った請求書の保存だけでなく、自社が発行する側も含めて電子化を進める場合は、請求書をペーパーレス化する方法を参考にしてください。
Q:対応しなかった場合のペナルティは?
A:電子取引データを適切に保存していない場合、税務調査で指摘を受ける可能性があります。悪質と判断された場合は「青色申告の承認取り消し」になるリスクもあります。
Q:クラウド会計ソフトを使えば完全に対応できる?
A:多くのクラウド会計ソフトは電子帳簿保存法に対応した機能を持っていますが、ソフトによって対応範囲が異なります。導入前に「電帳法対応」の機能を確認してください。
Q:いつまでに対応すればいい?
A:2024年1月1日以降の電子取引からすでに義務化されています。まだ対応していない場合は、できるだけ早く対応を始めてください。
まとめ
電子帳簿保存法への対応は、難しく考える必要はありません。
- 全事業者が対応必須なのは「電子取引のデータ保存」だけ
- 売上5,000万円以下の事業者は検索要件が免除されシンプルな管理でOK
- クラウドストレージ+ファイル名ルール+事務処理規程で対応できる
- クラウド会計ソフトを使えばさらに手間を減らせる
まずは自社の電子取引を洗い出して、保存ルールを決めることから始めてみてください。
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