「エクセルの出勤簿で回しているけれど、勤怠管理システムに切り替えたほうがいいのか」と迷っている方もいるかもしれません。
勤怠管理システムを「打刻をデジタルにする道具」と考えると、この判断を誤りやすくなります。システムが代わりにやるのは、打刻、集計、申請・承認、帳簿の作成という4つの工程です。エクセルで回せるかどうかも、工程ごとに分けて見ると判断がつきます。
この記事では、4つの工程それぞれについて、エクセルや紙で回す場合に増える作業と、システムを検討したいサインを整理します。法令の詳しい要件は勤怠管理と法令で、製品ごとの料金は勤怠管理システムの選び方で扱っています。
出典と確認日
- 労働安全衛生規則 第52条の7の3(e-Gov法令検索で原文を取得)
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省、平成29年1月20日策定)
勤怠管理システムとは何をする仕組みか
打刻、集計、申請・承認、帳簿の作成という4つの工程を1つにつないだ仕組みです。工程ごとに見ると、手作業で埋めていた部分がどこだったのかがはっきりします。
| 工程 | 手作業のときの状態 | システムがやること |
|---|---|---|
| 打刻 | 紙の出勤簿やタイムカードに記録 | ICカード・スマートフォン・PCなどから時刻を記録し、そのままデータになる |
| 集計 | 月末に手で転記し、時間外を計算 | 法定労働時間を超えた分、休日労働、深夜労働を自動で切り分ける |
| 申請・承認 | 紙やメールで残業・休暇を申請 | 申請と承認の履歴が打刻データと結びつく |
| 帳簿 | 年次有給休暇管理簿を別途作成 | 時季・日数・基準日を記録した管理簿を作れる(年5日に足りない人を知らせる機能は製品とプランによる) |
法律が求めているのは「客観的な記録」
労働安全衛生規則52条の7の3は、労働時間の状況を、タイムカードやパソコンの使用時間の記録などの客観的な方法で把握し、その記録を3年間保存するよう定めています。厚生労働省のガイドラインも、始業・終業時刻の確認と記録について、客観的な記録を基礎として確認する方法を原則の1つに挙げています。
このため、判断の分かれ目は「エクセルかシステムか」ではなく、記録の出どころが客観的かどうかです。保存年数の条文ごとの違いや、管理監督者の扱いは勤怠管理と法令で詳しく扱っています。
工程ごとに見る、エクセルで回せるかどうか
4つの工程それぞれについて、エクセルや紙のまま回す場合に増える作業と、システムを検討したいサインを並べます。
| 工程 | エクセル・紙で回す場合に増える作業 | システムを検討したいサイン |
|---|---|---|
| 打刻 | 本人が時刻を書き込む方式は自己申告制にあたり、実態調査と労働時間の補正が必要になる | パソコンのログや入退室記録のような、客観的な記録が手元にない |
| 集計 | 月末に転記し、時間外・休日・深夜を手で切り分ける | 切り分けに毎月まとまった時間がかかっている |
| 申請・承認 | 残業や休暇の申請を、打刻の記録と別に照らし合わせる | 申請と打刻が食い違ったとき、後からどちらが正しいか確かめられない |
| 帳簿 | 年次有給休暇管理簿を別に作り、年5日の取得状況を追う | 年5日に足りない人を、期限より前に把握できていない |
打刻:記録の出どころが客観的か
本人が時刻を書き込む方式は、ガイドラインでいう自己申告制にあたります。禁止されているわけではありませんが、実態調査と労働時間の補正などの措置が求められます。求められる措置の一覧は勤怠管理と法令にまとめています。
つまり表計算ソフトでの運用を続ける場合、浮くのはサービスの月額費用で、代わりに実態調査と補正という仕事が発生します。筆者の見解では、月額費用だけを見て比べるのではなく、この手間と並べて判断するほうが実態に合います。
一方で、パソコンの使用時間のログやICカードの入退室記録があり、それを基礎として集計している会社は、表計算ソフトを使っていても、客観的な記録を基礎として確認している状態に近づきます。
集計:人数が少なくても手間が減りにくい工程
ここからは筆者の見解です。導入の効果として語られやすいのは打刻の手軽さですが、負担が重いのは集計のほうだと考えています。時間外・休日・深夜の切り分けは、打刻の転記と違って件数が減っても手間が減りません。エクセルで回すかどうかを考えるときは、打刻よりも、この集計に毎月どれだけ時間を使っているかを先に確かめてください。
申請・承認と帳簿:月末の照らし合わせ
エクセルや紙のままだと、残業や休暇の申請、打刻の記録、年次有給休暇管理簿が別々の場所に残ります。システムでは、申請と承認の履歴が打刻データと結びつき、管理簿もそこから作れます。ただし、年5日に足りない人を知らせる機能があるかどうかは、製品とプランによって違います。
切り替えるかどうかの前に決めておくこと
- 締めの手順:誰がいつ承認し、給与計算にどう渡すか。ここが決まっていないと、システムを入れても月末の作業が残ります。エクセルのままでも、システムに移っても、この手順は同じように必要です。今の締めの流れを書き出しておくと、どの工程で手作業が残っているかが見えます。
- 対象に入れる人の範囲:管理職や裁量労働制の対象者を含めるかどうかは、法令上は含める方向で考えるほうが安全です。理由は勤怠管理と法令で扱っています。
切り替えると決めたら
打刻の方法による初期費用の違い、解約したときに記録を持ち出せるか、製品ごとの料金の型は、勤怠管理システムの選び方で、規模別の月額まで計算し直しています。
導入費用に補助金を充てられる場合があります。契約を先に済ませると対象外になるため、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の解説で順番を確認してから進めてください。
まとめ
- 勤怠管理システムは、打刻・集計・申請承認・帳簿の4工程をつなぐ仕組み
- 法令が求めるのは客観的な記録。エクセルかシステムかではなく、記録の出どころで判断する
- エクセルで回すと、打刻では実態調査と補正、集計では時間外・休日・深夜の切り分けが手作業で残る
- 切り替えを決める前に、締めの手順と対象者の範囲を決めておく
出典
※本記事は2026年9月13日時点の情報をもとに整理したものです。個別の事案の判断は、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

