中小企業のBCP対策|IT活用で災害・緊急時に備える方法を解説

DX推進

「大雪や台風のたびに業務が止まってしまう」「コロナのような緊急事態が起きたとき、対応できる自信がない」という経営者の方に向けて、中小企業がITを活用してBCP(事業継続計画)を整備する方法を解説します。

BCPとは?

編集部より

「うちは小さいから後回しでいい」という声を実際によく聞きますが、逆です。大企業は部署間でバックアップが利く一方、中小企業は特定の担当者しか把握していない業務が多く、一人が動けなくなった瞬間に業務全体が止まりやすい構造になっています。BCPは「防災対策」というより「属人化リスクへの備え」と捉えると、優先度が上がりやすいです。

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、災害・感染症・システム障害などの緊急事態が発生したときでも、重要な業務を継続・早期復旧できるよう事前に準備しておく計画のことです。

「うちは小さな会社だから関係ない」と思っている経営者の方も多いですが、中小企業こそBCPが重要です。大企業より人手が少なく、一人の欠員や業務の停止が会社全体に直結するからです。

中小企業が直面しやすい緊急事態

  • 台風・大雪・地震などの自然災害による出社困難
  • 感染症の流行による欠勤・休業
  • 停電・通信障害によるシステム停止
  • 重要な担当者の突然の退職・病気
  • サイバー攻撃によるデータ消失

ITを活用したBCP対策の5つの柱

柱1:クラウドでデータを管理する

編集部より

クラウド移行というと大掛かりに聞こえますが、まずは「今どのファイルが特定のPC1台にしか存在しないか」を洗い出すところから始めれば十分です。共有ドライブ(Google Drive、OneDriveなど)に置き換えるだけでも、機器故障時のデータ消失リスクはかなり下がります。全社移行は後からでも構いません。

パソコンやオフィスの社内サーバーにデータを保管していると、自然災害や機器の故障でデータが失われるリスクがあります。クラウドストレージに移行することで、場所を問わずデータにアクセスでき、データ消失のリスクも大幅に下がります。

柱2:テレワーク環境を整備する

出社できない状況でも業務を継続できるよう、テレワークの仕組みを事前に整えておきます。「いざとなればテレワークできる」という状態を作るためには、普段からテレワークを実施していることが重要です。

柱3:コミュニケーション手段を複数確保する

電話・メールだけでなく、ビジネスチャット・Web会議ツールなど複数のコミュニケーション手段を確保しておきます。緊急時に「連絡が取れない」という事態を防ぐためです。

柱4:定期的なバックアップを行う

データのバックアップは、BCP対策の基本です。クラウドストレージへの自動バックアップ・外付けHDDへの定期バックアップなど、複数の方法でバックアップを取っておきます。

柱5:業務マニュアルをデジタル化する

編集部より

この柱は5つの中で最も後回しにされがちですが、実は最も効果が長続きする対策です。クラウドやバックアップは「壊れたときの備え」ですが、マニュアル化は「人が抜けたときの備え」。特に経理・請求書処理など特定の1人しかやり方を知らない業務があれば、まずそこから手順を書き出すことをおすすめします。

重要な業務の手順をデジタルマニュアルとして整備しておくことで、担当者が不在でも他のメンバーが対応できます。属人化した業務をなくすことが、緊急時の業務継続につながります。

BCPとITツールの対応関係

緊急事態ITによる対策
自然災害・出社困難テレワーク環境・クラウドデータ管理
感染症・欠勤増加Web会議・チャット・マニュアルのデジタル化
停電・機器故障クラウドバックアップ・UPS(無停電電源装置)
担当者の突然の欠員マニュアルデジタル化・クラウド共有
サイバー攻撃セキュリティソフト・バックアップ

中小企業のBCP整備 3ステップ

Step 1:リスクの洗い出し

自社にとって「これが止まったら困る」という重要な業務と、想定されるリスクをリストアップします。

Step 2:優先順位をつけて対策する

編集部より

優先順位づけで迷ったら、「発生頻度」と「影響の大きさ」の2軸で書類やホワイトボードに書き出してみるのが有効です。台風・大雪のような自然災害は発生頻度が読みやすい一方、担当者の急な欠員は頻度が読みにくいぶん見落とされがちですが、影響は自然災害と同等かそれ以上になることも珍しくありません。

すべてのリスクに一度に対応することは難しいので、発生可能性が高く・影響が大きいものから優先して対策します。

Step 3:定期的に訓練・見直しをする

BCPは作って終わりではなく、定期的に実際に試してみることが重要です。年1回テレワークを前提とした業務訓練を実施することをお勧めします。

こんな状況、心当たりはありませんか?

【緊急時への不安】
「大雪で出社できない社員が出るたびに、その日の業務がほぼ止まってしまう」

テレワーク環境とクラウドデータ管理が整っていれば、出社できなくても業務を継続できます。 普段からテレワークを実施しておくことが最大の備えです。

【データ消失への不安】
「大事なデータがパソコン1台に集中しており、壊れたら全部なくなるのが怖い」

クラウドストレージとバックアップを整備することで、機器が壊れてもデータが守られます。 まずクラウドストレージへの移行から始めましょう。

【属人化への不安】
「特定の社員しかできない業務があり、その人が急に休んだら対応できない」

業務マニュアルのデジタル化と共有で、誰でも一定水準の業務が対応できる体制が作れます。 担当者不在時のリスクを大幅に下げられます。

編集部より

BCPは一度整備して終わりではなく、Step3にある「定期的な訓練・見直し」が本質です。実際に訓練してみると、「クラウドにデータはあるがパスワードを知っている人が限られていた」といった、計画段階では気づけない穴が見つかることがよくあります。年1回の訓練は、備えの「実効性」を確認する唯一の機会と考えてください。

まとめ

  • BCPとは緊急事態でも業務を継続・早期復旧できるよう事前に準備しておく計画
  • 中小企業こそ人手が少なく、BCP整備が重要
  • クラウドデータ管理・テレワーク環境・複数のコミュニケーション手段が基本の3つ
  • 定期的なバックアップと業務マニュアルのデジタル化も重要な柱
  • まずリスクを洗い出し、優先順位をつけて段階的に対策を進める

テレワーク導入の具体的な手順については、テレワーク解説記事もあわせてご覧ください。

IT業界で30年近く、大企業向けCRM・CMS開発や証券系システム開発に携わってきたエンジニア。葬儀会社をはじめとする中小企業のDX支援の現場で、「ペーパーレスが進まない」「FAXが手放せない」といったリアルな壁を数多く見てきた経験をもとに、"現場で本当に使えるDX情報" を発信しています。

中小企業DXナビ編集部をフォローする
DX推進
中小企業DXナビ編集部をフォローする
タイトルとURLをコピーしました