デジタル化・AI導入補助金2026(旧:IT導入補助金)のセキュリティ対策推進枠は、「セキュリティ製品を買うための枠」と思われるかもしれませんが、公募要領を読むと対象になっているのは製品の購入費ではありません。この枠の補助対象経費は「サービス利用料(最大2年分)」の一区分だけで、ソフトウェアの購入費やハードウェアの費用は、この枠の経費区分に置かれていません。そしてもう一つ、見落とすと準備が無駄になる規定があります。過去にお助け隊サービスを含むITツールで交付決定を受けた事業者は、この枠に申請できません。
この記事は、デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領(セキュリティ対策推進枠・通常枠。いずれも最終改訂2026年8月28日)と、事務局が公開しているよくある質問、事業スケジュールのページを読んで書いています。扱う範囲は、この枠で何が対象になるか、いくらまで出るか、同じサービスを通常枠のオプションとして申請する場合とどちらを選ぶことになるか、申請後に何を報告し続けることになるかの4点です。個々のサービスの価格や製品比較は扱いません。
・デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(セキュリティ対策推進枠)最終改訂2026年8月28日
https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_security.pdf
・デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)最終改訂2026年8月28日
https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf
・デジタル化・AI導入補助金2026 よくある質問(セキュリティ対策推進枠)
https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_faq_security.pdf
・デジタル化・AI導入補助金2026 セキュリティ対策推進枠(事務局ポータルサイト)
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/security/
・デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール
https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/
確認日:2026年9月26日
公募要領は改訂されます。申請前に必ず事務局ポータルサイトで最新版を確認してください。
この枠は何のための枠か
公募要領は事業の目的を次のように書いています。「本事業は、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入するための事業(以下「補助事業」という。)に要する経費の一部を補助することにより、中小企業・小規模事業者等のサイバーセキュリティ対策を強化して、サイバーインシデントを原因として事業継続が困難となる等の生産性向上を阻害するリスクを低減するとともに、供給制約やそれに起因する価格高騰といった潜在的リスクを低減することを目的とする。」
目的の文が「生産性向上を阻害するリスクを低減する」と書かれている点は、この枠の性格を表しています。セキュリティ対策そのものを目的に置くのではなく、事業が止まることを防いで生産性を守るという建て方で、申請要件にも後述のとおり生産性の計画が入っています。
対象になるのは「お助け隊サービス」に載っているサービス
この枠で導入できるITツールは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのうち、本事業においてIT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に事前登録されたものです。条件が二段になっていることに注意してください。IPAのリストに載っているだけでは足りず、この補助金に登録されているIT導入支援事業者が、そのサービスをITツールとして事務局に登録している必要があります。
公募要領は、IT導入支援事業者を「生産性向上を目指す中小企業・小規模事業者等に対してITツールを導入し、補助事業を円滑に遂行するための支援を行う事業者」で、「事務局に登録申請を行い、事務局にてその適格性が審査された結果、採択された者」と定義しています。申請は事業者が単独で進める形ではなく、IT導入支援事業者と組んで行うことが前提になっています。
また、1回の交付申請で選べるITツールの数には上限があります。事務局のよくある質問は「交付申請で選択できるITツールの上限数はいくつですか。」という質問に対し、「1ツールです。」と回答しています(よくある質問 No.34)。複数のサービスを並べて申請する形にはなっていません。
この枠は「一度使うと二度使えない」
金額や要件を検討する前に、まずここを確認してください。公募要領には次の注記があります。
「「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を含むITツールについて、IT導入補助金2022、2023、2024及び2025において、いずれかの枠で交付決定を受けた場合又はデジタル化・AI導入補助金2026において、いずれかの枠で申請を行っている若しくは交付決定を受けた場合、本事業の申請を行うことはできない。」
読み方は2つに分かれます。過去分については、IT導入補助金2022から2025までのあいだに、お助け隊サービスを含むITツールでどの枠であっても交付決定を受けていれば、この枠には申請できません。セキュリティ対策推進枠で受けた場合だけではなく、通常枠のオプションとして受けた場合も含まれます。今年度分については、デジタル化・AI導入補助金2026のいずれかの枠で申請中であるか交付決定を受けている場合も、申請できません。
よくある質問も同じ内容を書いています。「IT導入補助金2022、2023、2024及び2025にセキュリティ対策推進枠で補助金の交付を受けた事業者、また「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を含むITツールについていずれかの枠で過去に交付決定を受けた場合は、セキュリティ対策推進枠の申請はできません。」(よくある質問 No.21)
ここからは筆者の見解です。この規定があるため、お助け隊サービスの導入でこの補助金を使える機会は、事業者ごとに実質的に一度きりと考えて計画を立てるのが安全です。安いサービスで下限ぎりぎりの申請を通してしまうと、あとでより広い対策に切り替えたいときに、この枠は使えなくなります。どのサービスを何年分で申請するかは、目先の採択しやすさではなく、この一度をどう使うかという順序で決めることになります。
スケジュール
交付申請期間は公募要領に「2026年3月30日~」と書かれており、個別の締切日は公募要領には載っていません。公募要領には「※受付スケジュールは本事業ホームページに順次公表」とあり、実際の締切は事務局ポータルサイトの事業スケジュールのページで公表されています。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 交付申請期間の開始 | 2026年3月30日 | 公募要領 |
| 2026年10月3日時点で日程が公表されている締切 | 2026年10月30日(金)17:00 | 事業スケジュール |
| 交付決定日 | 2026年12月10日(木)(予定) | 事業スケジュール |
| 事業実施期間 | 交付決定~2027年5月31日(月)17:00(予定) | 事業スケジュール |
| 事業実績報告期限 | 2027年5月31日(月)17:00(予定) | 事業スケジュール |
事業スケジュールのページには、確定している募集回のスケジュールのみを公表し、以降は随時更新するという注記があります。なお公募要領は、補助事業の実施期間を「交付決定日~6ヶ月間程度」と書いています。
金額と補助率
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象経費 | サービス利用料(最大2年分) |
| 補助率 | 1/2以内(小規模事業者は2/3以内) |
| 補助額 | 5万円~150万円 |
上限の150万円だけを見て予算を立てると読み違えます。補助率が1/2以内である以上、150万円を受け取るには対象経費が300万円必要で、小規模事業者の2/3で計算しても225万円の対象経費が必要になります。
実務で効いてくるのは下限の5万円です。補助額が5万円に届くには、補助率1/2の中小企業なら対象経費が10万円、2/3の小規模事業者なら7万5千円必要です。2年分(24か月)で申請できる場合、10万円を24で割ると月あたり約4,167円、7万5千円なら月あたり3,125円になります。前述のとおり選べるITツールは1ツールだけなので、複数のサービスを足して下限に届かせることはできません。単価の小さいサービスを選ぶ場合は、そのサービス単体の対象期間分の利用料が下限に届くかを先に確認することになります。
小規模事業者かどうかで補助率が変わる
補助率2/3が使えるのは公募要領の定義でいう小規模事業者です。公募要領の定義は次のとおりです。
| 業種分類 | 小規模事業者の範囲 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く。) | 常時使用する従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
| 製造業その他 | 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
中小企業者の範囲は別に定められています。主な業種分類は次のとおりです。
| 業種分類 | 中小企業者の範囲 |
|---|---|
| 製造業(ゴム製品製造業を除く。)、建設業、運輸業 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主 |
| 卸売業 | 資本金1億円以下又は従業員100人以下 |
| サービス業(ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く。) | 資本金5千万円以下又は従業員100人以下 |
| 小売業 | 資本金5千万円以下又は従業員50人以下 |
| ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。) | 資本金3億円以下又は従業員900人以下 |
| ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 資本金3億円以下又は従業員300人以下 |
| 旅館業 | 資本金5千万円以下又は従業員200人以下 |
| 医療法人、社会福祉法人、学校法人 | 常時使用する従業員の数が300人以下の者 |
| 商工会・都道府県連合会及び商工会議所 | 常時使用する従業員の数が100人以下の者 |
このほかに、中小企業団体、特別の法律によって設立された組合又はその連合会、財団法人・社団法人(一般・公益)、特定非営利活動法人の行も置かれており、それぞれ主たる業種の従業員規模以下であることとされています。
この枠の核心:この枠で出すか、通常枠のオプションで出すか
お助け隊サービスの導入でこの補助金を使う方法は、この枠だけではありません。事務局のよくある質問は、この点を正面から扱っています。
質問は「サイバーセキュリティお助け隊サービスリストのソフトウェアはセキュリティ対策推進枠で申請しないといけませんか。」というもので、回答は「セキュリティ対策推進枠で申請する事が可能です。通常枠またはインボイス枠(インボイス対応類型)のオプションにおいて「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を申請することは可能です。ただし、重複して申請することはできません。」です(よくある質問 No.11)。
この2つの道は、対象になる期間が違います。セキュリティ対策推進枠の補助対象経費は「サービス利用料(最大2年分)」です。一方、通常枠の補助対象となるITツールの分類表では、大分類Ⅱオプションの欄に「最大1年分の費用を補助対象とする。」と書かれており、カテゴリー2(機能拡張)・カテゴリー3(データ連携ツール)・カテゴリー4(セキュリティ)が同じ欄に置かれています。同じサービスでも、この枠なら最大2年分、通常枠のオプションなら最大1年分が対象になる建て方です。
| 比較項目 | セキュリティ対策推進枠 | 通常枠 |
|---|---|---|
| 補助対象経費の区分 | サービス利用料(最大2年分) | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、導入関連費 |
| セキュリティのサービスの対象期間 | 最大2年分 | オプションの欄に「最大1年分の費用を補助対象とする。」 |
| 補助率 | 1/2以内(小規模事業者は2/3以内) | 1/2以内。ただし令和6年10月から令和7年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は2/3以内 |
| 補助額 | 5万円~150万円 | 5万円~150万円未満/150万円~450万円以下 |
表から読めることは3つです。ひとつは、通常枠のほうが経費区分が広く、補助額の上限も450万円以下の区分まで用意されていること。ふたつめは、セキュリティのサービスについては、対象期間がこの枠のほうが長いこと。みっつめは、2/3の補助率に達する条件が両者で違うことです。この枠は事業者の規模(小規模事業者かどうか)で決まり、通常枠は低賃金層の雇用状況で決まります。
ここからは筆者の見解です。セキュリティ対策だけを目的に申請するなら、対象期間が2年分あり、小規模事業者なら2/3が使えるこの枠が先に来ます。一方、業務システムの導入とあわせてセキュリティサービスも入れるなら、経費区分が広い通常枠に寄せてオプションとして申請するほうが、1回の申請で扱える範囲は広くなります。ただしその場合、セキュリティのサービスについては対象が1年分に縮みます。判断は「セキュリティ以外に導入したいITツールがあるか」と「そのサービスを2年分で申請したいか」の2点で決まる、という整理になります。これは経費区分・対象期間・補助率の比較から導いた当てはめであって、公募要領がこの選び方を推奨しているわけではありません。
「1申請のみ」の読み方
公募要領は「デジタル化・AI導入補助金2026の交付申請期間中、中小企業・小規模事業者等(1法人・1個人事業主)当たり1申請のみとする」と定めています。よくある質問はこの制限をもう一段説明しています。
「デジタル化・AI導入補助金2026の公募期間中、中小企業・小規模事業者等(1法人・1個人事業主)あたり、1申請のみとしています(交付決定についても同様)。ただし、同期間中に公募中のデジタル化・AI導入補助金2026の通常枠、複数者連携IT導入枠及びインボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)のそれぞれに申請し、交付決定及び補助金の交付を受けることは可能です。※通常枠又はインボイス枠(インボイス対応類型)のオプション及び本事業において「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を重複して申請することはできません。ただし、いずれかの締切り回で不採択となった場合又は交付決定後から実績報告を経て補助金の交付を受けるまでに取下げした場合はその限りではありません。なお、法人が申請を行う場合、支社や支店・営業所単位からの個別申請は受け付けられません。」(よくある質問 No.13)
枠をまたいで申請できることと、同じお助け隊サービスを二重に申請できることは別の話です。重複の禁止には例外があり、不採択になった場合や、交付決定後に補助金の交付を受けるまでに取下げした場合はその限りではないと書かれています。不採択の場合の再申請についても、よくある質問は「各締切り回で公表される採択結果にて不採択となった場合、次回以降の締切りまでに再申請は可能です。」と回答しています(よくある質問 No.17)。なお、支社や支店・営業所単位で個別に申請することはできません。
申請要件と、申請後に続く義務
公募要領が挙げている申請要件のうち、事前の準備が必要なものを挙げます。
- 「交付申請時点において、日本国内で法人登記(法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること。)され日本国内で事業を営み、かつ日本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する法人又は日本国内に補助事業の実施場所を有する個人であること。」
- GビズIDプライムを取得していること
- 「独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」又は「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行うこと。また、宣言内容の確認に際し事務局が一部の交付申請情報を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)と共有することに同意すること。」
- 労働生産性の年平均成長率を1パーセント以上とする、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画を策定し実行すること
労働生産性の定義は公募要領に式で書かれています。(営業利益+人件費+減価償却費)÷年間の事業者当たり総労働時間です。営業利益が分子に入っているため、サービスの利用料が費用として乗ると、他の条件が同じなら分子は小さくなります。1パーセント以上の成長を3年間の計画に書くという要件は、セキュリティ投資だけで満たすことを想定した形にはなっていません。
過去にIT導入補助金2022からIT導入補助金2025までのあいだに交付決定を受けている事業者には、賃上げの要件が加わります。公募要領は「事業計画期間において、1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率を3.5パーセント(日本銀行が定める「物価安定の目標」+1.5パーセント)以上向上させること。」と定めています。なお、お助け隊サービスを含むITツールで交付決定を受けている場合は、前述のとおり申請そのものができません。
交付決定前に契約すると対象外になる
公募要領は「交付決定前にITツールを契約、発注した場合は補助対象とならない。交付決定後に契約、発注を行うこと」と書いています。締切が2026年10月30日で交付決定日が12月10日(予定)である以上、申請から交付決定までの間、サービスの契約は待つことになります。
返還を求められる場合
公募要領は返還について2つの場面を書いています。ひとつは賃上げの目標が未達の場合で、1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の増加目標が達成できていない場合は、補助金の全部の返還を求める場合があるとされています。ただしこれには例外が付いています。「ただし、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として3年の事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、上記の補助金の返還を求めない。」
もうひとつはツールをやめた場合です。公募要領は「複数のITツールを導入し、そのうちの一部を解約する場合であっても、実施している補助事業の辞退とみなす場合があるため、辞退の手続きを行う必要がある。」と書いており、辞退した場合は交付規程に基づき、交付された補助金の全部又は一部の返還が必要となる場合があるとされています。解約がそのまま返還につながるのではなく、解約が辞退とみなされ、辞退したことによって返還が生じるという順序です。
また、事務局及び中小機構は、補助事業の適切な遂行を確保するため必要があると認めるときは、補助事業者及びIT導入支援事業者に対し、予告なく立入調査を行う場合があるとされています。
効果報告は3回に分かれている
補助金を受け取ったあと、報告が続きます。公募要領は効果報告の対象期間と報告期間を次のように定めています。
| 年度 | 効果報告対象期間 | 効果報告期間 |
|---|---|---|
| 事業計画期間前 | ITツール導入後~ | 2027年3月~ |
| 1年度目 | 交付申請時点の翌事業年度 | 2028年4月~2029年1月 |
| 3年度目 | 交付申請時点より決算期を3期経過した事業年度 | 2030年4月~2031年1月 |
ここからは筆者の見解です。報告期間が2031年1月まで伸びている点は、申請時に見落としやすいところです。補助対象になるサービス利用料が最大2年分である一方、効果報告は3年度目まで続きます。補助が切れたあともサービスの利用は続き、その費用は自己負担になります。申請の判断は、2年分の補助額ではなく、3年目以降も払い続けられる月額かどうかで決めるのが安全だと考えます。
審査で見られること
公募要領は加点項目を10項目挙げています。主なものは、SECURITY ACTIONの「★★ 二つ星」の宣言、賃上げに関する項目、「IT戦略ナビwith」の実施、「健康経営優良法人2026」の認定、女性活躍推進法に基づく認定またはくるみん認定、「成長加速マッチングサービス」への登録、「省力化ナビ」の活用です。このほかに、低賃金層の雇用状況と事業場内最低賃金の引上げ状況に関する項目もあります。
賃上げの加点は、条件を1つ満たせばよいという形ではありません。公募要領は、IT導入補助金2022からIT導入補助金2025までのあいだに交付決定を受けた事業者以外について、事業計画期間において以下の要件を全て満たす、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画を策定し、実行していることを加点の条件としています。
- 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
- 1人当たり給与支給総額(非常勤を含む全従業員)の年平均成長率を3パーセント(日本銀行が定める「物価安定の目標」+1パーセント)以上向上させること
- 交付申請時点で、上記に基づく賃金引上げ計画を策定し従業員に表明していること
3つ目の「従業員に表明していること」は、書類の作成だけでは終わらない条件です。過去に交付決定を受けた事業者向けには、給与支給総額の成長率を3.5パーセント以上とする同趣旨の加点項目が別に置かれています。
減点項目も3つあります。過去に交付決定を受けた事業者と、賃金引上げの加点を受けたのに達成できなかった事業者、中小企業庁が所管する他の補助金で同様に賃金引上げの加点を受けたのに達成できなかった事業者が対象とされています。
申請要件が「★ 一つ星」以上で、加点が「★★ 二つ星」であることにも注意してください。一つ星だけでは要件を満たすにとどまります。
他の制度との使い分け
セキュリティ対策を補助金で入れる場合、選択肢はこの枠だけではありません。同じデジタル化・AI導入補助金2026のなかでの使い分けは前述のとおりで、デジタル化・AI導入補助金2026の全体像と申請の流れをあわせて読むと、通常枠・インボイス枠との関係が整理できます。
制度をまたぐ場合は、対象経費の考え方が変わります。小規模事業者持続化補助金でITツールを買えるかどうかは、小規模事業者持続化補助金でITツールは買えるかで公募要領から整理しています。同じ「ITの費用」でも、制度ごとに対象になる区分と対象外に名指しされる区分が違うため、1つの制度の結論を他に持ち込まないほうがよいところです。ほかの制度も含めて全体を見たい場合は中小企業が使えるDX関連の補助金まとめから入れます。
受け取ったあとの税務も先に知っておくと計画が立てやすくなります。補助金の課税のタイミングと圧縮記帳の扱いは補助金を受け取った後の税務(圧縮記帳と課税のタイミング)にまとめています。
申請前チェックリスト
- お助け隊サービスを含むITツールで、IT導入補助金2022~2025のいずれかの枠で交付決定を受けていないか(受けている場合は、この枠に申請できない)
- デジタル化・AI導入補助金2026の他の枠で、申請中または交付決定を受けていないか(同じく申請できない)
- 導入したいサービスが、IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているか
- そのサービスが、この補助金のIT導入支援事業者によってITツールとして事務局に登録されているか
- 選べるITツールは1ツールのみ。そのサービス単体の対象期間分の利用料に補助率を掛けた額が、下限の5万円に届くか
- 自社が公募要領の定義でいう小規模事業者に当たるか(補助率が1/2か2/3かが変わる)
- 通常枠のオプションとして申請する道と比べたか(対象期間が最大1年分になる代わりに、他のITツールも一緒に申請できる)
- GビズIDプライムを取得しているか(取得には日数がかかる)
- SECURITY ACTIONの一つ星以上を宣言しているか。二つ星にすれば加点になる
- 労働生産性の年平均成長率1パーセント以上を含む、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画を書けるか
- 交付決定日(日程が公表されている回では2026年12月10日予定)まで契約・発注を待てるか
- 2031年1月までの効果報告と、補助が切れた3年目以降の月額を負担できるか
まとめ
セキュリティ対策推進枠は、対象経費がサービス利用料(最大2年分)の一区分しかない枠です。補助率は1/2以内で、小規模事業者だけ2/3以内まで上がります。補助額は5万円から150万円で、上限を使い切るには2年分で300万円(小規模事業者は225万円)の対象経費が必要になる一方、選べるITツールは1ツールだけなので、単価の小さいサービスでは下限の5万円に届かないこともあります。
最初に確認すべきは、お助け隊サービスを含むITツールで過去に交付決定を受けていないかです。受けている場合、この枠には申請できません。同じサービスを通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型)のオプションとして申請する道もありますが、重複はできず、オプションの欄では対象が最大1年分と書かれています。申請後は交付決定まで契約を待つ必要があり、効果報告は2031年1月まで続きます。締切は事務局のスケジュールページで公表され、2026年10月3日時点で日程が公表されている締切は2026年10月30日(金)17:00です。
出典
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(セキュリティ対策推進枠)最終改訂2026年8月28日
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)最終改訂2026年8月28日
- デジタル化・AI導入補助金2026 よくある質問(セキュリティ対策推進枠)
- デジタル化・AI導入補助金2026 セキュリティ対策推進枠
- デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール
この記事は2026年9月26日時点で公開されている公募要領・よくある質問・事務局ポータルサイトの記載に基づいて作成したものです。制度の内容・金額・日程は改訂されます。申請の可否や個別の経費が対象になるかどうかの判断は、必ず最新の公募要領と事務局・IT導入支援事業者への確認によってください。税務上の取扱いについては税理士等の専門家にご相談ください。
